Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 11 No. 1 pp 97-101, 2021
特集２
ディサースリアの治療の重要論文を読む：治療の時代
翻訳
パーキンソン病患者への集中的音声治療 （LSVT Ⓡ）による声量変化：未治療パーキンソン病患者および同一年齢層健常者との比較
Changes in Vocal Loudness Following Intensive Voice Treatment （LSVT Ⓡ）in Individuals with Parkinson’s Disease： A Comparison with Untreated Patients and Normal Age-Matched Controls
Lorraine O. Ramig, PhD1, 2）, Shimon Sapir, PhD2） , Cynthia Fox, MA, CCC-SLP3） , Stefanie Countryman, MA, CCC-SLP2）
1） Department of Speech Language and Hearing Sciences, University of Colorado-Boulder, Boulder, Colorado 2） Wibur James Gould Voice Center, Denver Center for the Performing Arts, Denver, Colorado
3） National Center for Neurogenic Communication Disorders, Department of Speech and Hearing Sciences, University of Arizona, Tucson, Arizona
（Movement Disorders, 16：79-83, 2001）
訳：倉智雅子
国際医療福祉大学成田保健医療学部言語聴覚学科
概要：この研究では，特発性パーキンソン病（IPD）に伴うディサースリア患者の声の大きさ［音圧レベル（SPL）］に対するリー・シルバーマンの音声治療（LSVT Ⓡ）の影響を評価した．治療前後のSLPの変化を，２つの対照群（LSVT Ⓡを受けていない IPD 患者群および同一年齢層の健常成人群）と比較した．全ての被験者に同じ発声と発話の課題（母音の持続発声，「Rainbow Passage」の文章音読，短い自発話，絵の説明）を課した，治療の直前，治療の直後，および治療後６カ月の３時点で録音した．LSVT Ⓡ治療群では，治療前と治療後で平均８dB，治療前と治療後６カ月で平均６dB の音圧レベルの増加が認められた．これらの変化は統計学的に有意であり，聴覚的にも知覚できるほどであった．治療および経過観察期間中に，対照群では音圧レベルに有意な変化は観察されなかった．LSVT Ⓡ治療群と未治療群における訓練直後と６カ月後の比較では，全ての発声と発話課題において音圧レベルの変化に統計的は有意差が認められた．これらの研究結果は，他の研究結果と共に，LSVT Ⓡの有効性を支持するものであった．
キーワード：パーキンソン病，発話療法，声の大きさ，ディサースリア
Mov Disord, 16：79-83, 2001. Ⓒ 2001 Movement Disorder Society.