Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 11 No. 1 pp 84-87, 2021

特集2

ディサースリアの治療の重要論文を読む:治療の時代

翻訳

 
言語システムが損なわれていない重度のディサースリアのある発話者のためのコミュニケーションシステム
A Communication System for the Severely Dysarthric Speaker with an Intact Language System

David R. Beukelman, Kathryn Yorkston
University of Washington Hospitals, Seattle
(Journal of Speech and Hearing Disorders, 42:265-270, 1977)
訳:松原慶吾
熊本保健科学大学保健科学部リハビリテーション学科言語聴覚学専攻

 アルファベットボードを用いて1文字ずつ綴って意図を伝えていた2名の重度のディサースリアのある発話者は,各単語の語頭の文字を指さして話すコミュニケーションシステム(ポインティング・スピーチ)の指導を受けた.ポインティング・スピーチとポインティング・スピーチを用いない発話の発話速度と発話明瞭度をビデオ撮影されたサンプルを見て評価者が判断した.ポインティング・スピーチを用いた発話と用いない発話の発話速度は,アルファベットボードを用いて文字を綴って伝えるよりも明らかに速かった.ポインティング・スピーチは,ポインティング・スピーチを用いない発話より遅かったが,発話明瞭度は高かった.さらに分析すると,発話明瞭度には少なくとも(1)発話速度と,(2)各単語の最初の文字を指さすことで得られる情報の2つの要素が影響していることがわかった.1名の発話者は両方の要素が発話明瞭度の向上に寄与し,もう1名の発話者は語頭の文字の情報のみが発話明瞭度に影響しているように思われた.

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