Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 11 No. 1 pp 81-83, 2021
特集２
ディサースリアの治療の重要論文を読む：治療の時代
抄訳
ディサースリアのある発話者の構音の聴覚的適切度における軟口蓋挙上装置の効果
The Effects of Palatal Lift Fitting on the Perceived Articulatory Adequacy of Dysarthric Speakers
Kathryn M. Yorkston, Melissa J. Honsinger, David R. Beukelman, Thomas D. Taylor
（Recent Advances in Clinical Dysarthria, College-Hill Press, Boston, pp85- 98, 1989 より抄訳）
訳：川村直子
姫路獨協大学医療保健学部言語聴覚療法学科
ディサースリアのある発話者の鼻咽腔閉鎖機能不全に対する軟口蓋挙上装置の使用には比較的長い歴史があり，多数の先行研究でその成果が報告されている（Aten et al., 1984；Fletcher, Sooudi, and Frost, 1974；Gibbons and Bloomer, 1958；Gonzalez and Aronson, 1970；Hardy et al., 1969；Kerman, Singer, and Davidoff, 1973；Kipfmueller and Lang, 1972；Lang, 1967；Lawshe et al., 1971；LaVelle and Hardy, 1979；Schweiger, Netsell, and Sommerfeld, 1970；Shaughnessy, Netsell, and Farrage, 1983）．これらの報告では，軟口蓋挙上装置を装着した時の主観的な満足度，あるいは特定の客観的尺度で結果が示されていることが多く，構音の誤りパターンの変化を示した報告はほとんどない．また，大部分が軟口蓋挙上装置による即時変化を測定したものであり，長期追跡調査の報告は少ない．この研究では，鼻咽腔閉鎖機能不全のある重度ディサースリアの発話者に軟口蓋挙上装置を装着した時の構音の聴覚的適切度，構音の誤りパターンの変化，軟口蓋挙上装置の適合後や行動的治療後にみられる発話の変化，などについて調査する．