Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 9 No. 1 pp 98-99, 2019

特集2 ディサースリアの治療の重要論文を読む:黎明期
翻訳 急性延髄性灰白髄炎感染症から生じた発話不全に対する治療

Therapy for Speech Deficiencies Resulting from Acute Bulbar Poliomyelitis Infection

Elmer E. Baker, Jr, Martin A. Sokoloff
(Journal of Speech and Hearing Disorders, 16(4):337-339, 1951.)
訳:福岡達之
広島国際大学総合リハビリテーション学部リハビリテーション学科言語聴覚療法学専攻

 ニューヨーク市のベルヴュー病院リハビリテーション医学部に定期検診のため入院した急性延髄灰白髄炎感染症の患者に特徴的な発話の異常が観察された.患者にみられた症状は反復性に出現する不活性な(organica passive)開鼻声であった.医療ソーシャルワーカーによる患者と家族の面談から,この発話症状は疾患の発症前には認めていなかったことが分かった.この特定の病因から生じる発話障害の有効な治療法を調査するため,特別なプロジェクトが計画された.19 名の患者群に対して,耳鼻咽喉科の診察と週単位での個別治療セッションを実施した.全ての患者に確認された病因は,脊髄前角炎と対比する延髄灰白髄炎であった.急性灰白髄炎は,脊柱内において灰白質の前角に特定のウィルスが感染する特徴がある.病理学的結果から,脊髄型では四肢・体幹を含む神経破壊が生じると考えられている.延髄灰白髄炎は延髄領域において疾患の感染を認める.延髄病変では,臨床的に嚥下と呼吸の関連筋に麻痺を生じる.呼吸困難,チアノーゼ,咽頭・喉頭と舌の麻痺が顕著な症状である.疾患による致死率は90%以上であり,このタイプの灰白髄炎は明らかに致命的である.

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