Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 9 No. 1 pp 23-28, 2019

特集1 さまざまな神経筋疾患を理解する
総説 多系統萎縮症の病態生理,診断基準,臨床経過

渡辺宏久、植田晃広、島さゆり、水谷泰彰、新美芳樹
藤田医科大学医学部脳神経内科学

要旨 多系統萎縮症( MSA) は,病理学的にglial cytoplasmic inclusionの出現を特徴とする進行性の神経変性疾患で,パーキンソニズム,小脳失調,自律神経不全,錐体路徴候を経過中に種々の程度で認める.孤発性が圧倒的に多い.パーキンソニズムが優位な臨床病型はMSA-P,小脳失調が優位な臨床病型はMSA-C と呼ばれる.欧米ではMSA-P が多く,日本ではMSA-C が多い.平均発症年齢は55~60 歳で,若年発症例や,75 歳を超える高齢発症例もある.診断には運動機能異常(パーキンソン症状もしくは小脳性運動失調)と自律神経不全の存在が必須で,両系統の症状が揃うまでの期間の中央値は2年である.早期からのディサースリアや嚥下障害をはじめとするRed flags サイン(診断を支持する特徴)にも留意する.頭部MRI のほか,Tilt 試験,ウロダイナミックスタディ,123 I-metaiodobenzylguanidine(MIBG)心筋シンチグラフィーなどが補助検査として有用である.予後は6年から10 年で,突然死が多いことが特徴であり,高度な自律神経不全は予後不良因子である.従来は稀と考えられていた認知症の合併をはじめ,多様な臨床病型を呈する一群のあることも明らかとなっている.

キーワード パーキンソニズム,小脳性運動失調,自律神経不全,突然死

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