Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol.6 No.1 pp41-46,2016

舌変形が生み出す音声の共通性と個人性

竹本浩典

要旨: 舌は内部に骨格をもたないほぼ筋肉のみからなる器官であり,筋静水圧系の一つである.ある筋が活動すると,その筋線維の長軸方向には短縮するが,体積は一定であるため,その横断方向には膨張する.舌はこの原理で変形する.舌変形によって口腔と咽頭の容積比が変化すると,低次のフォルマント周波数は規則的に変動し,音声の共通性である音韻の違いを生み出す.一方,舌根より下の喉頭腔や梨状窩の形状は個人差が大きいが,舌変形の影響が小さいため,中心周波数が安定した1つのフォルマントと2つの大きなディップを生成し,音声の個人性の要因となる高い周波数領域の音声スペクトルを特徴づける.

キーワード:舌筋,筋静水圧系,音声生成,母音,個人性

千葉工業大学先進工学部知能メディア工学科

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