Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 15 No. 1 pp 2-7, 2025

症例報告

押しボタン法により発話明瞭度が飛躍的に改善した多系統萎縮症の1例
川上菜都美 1)2),三好まみ 1)
1)独立行政法人国立病院機構 高松医療センター リハビリテーション科
2)独立行政法人国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター リハビリテーション科

要旨 
多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)に伴う重度ディサースリア1例に対し音声言語治療を実施した.小脳性運動失調を主徴とするタイプ(multiple system atrophy with predominant cerebellar ataxia:MSA-C)で認知機能障害も呈しており,従来から用いられている発話速度の調節法では改善がみられず治療に難渋した.そこでジェリービーンスイッチツイスト(Ablenet社)をモーラ単位で押しながら発話する方法(押しボタン法)を考案し導入したところ,発話速度が調節され発話明瞭度が5/5から2.5/5へと飛躍的に改善した.この手法は操作が平易で,かつ聴覚的・触覚的フィードバック機構が働くことなどから失調症状の強い上肢でもリズミカルにタップすることが可能であり,進行期の重度MSAなどの神経変性疾患例に対する新たなコミュニケーション技法として有用であることが示唆された.
キーワード 多系統萎縮症,MSA-C,ディサースリア,認知機能障害,押しボタン法

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