Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 13 No. 1 pp 35-40, 2023

特集1

ディサースリアの関連障害:最新のトピックス

総説

サルコペニアおよびその摂食嚥下障害ならびにディサースリアとの関連
森隆志
総合南東北病院 口腔外科 摂食嚥下リハビリテーションセンター

要旨
 サルコペニアは身体機能の低下をもたらし,発声発語機能,嚥下機能に影響を与え得るため,ディサースリアや摂食嚥下障害のリハビリテーションにおいては重要な評価項目である.サルコペニアの評価の3要素は,「筋力」・「筋肉量」・「機能」である.サルコペニアの代表的な評価方法は,European Working Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)により2018年に発表された定義(EWGSOP2)である.本邦では,アジア人の人種的な特徴を考慮したAsian Working Group on Sarcopenia(AWGS)により2019年に発表された診断法が普及している.サルコペニアの治療には,栄養と運動の双方が重要である.治療の際には対象者の状態に応じた栄養や運動の負荷の調整が重要である.
 嚥下関連群のサルコペニアが生じることが頤舌骨筋,顎二腹筋前腹,舌筋,側頭筋,中咽頭周囲の筋にて示されている.これらの筋群のサルコペニアはサルコペニアの摂食嚥下障害の成因の一つである.嚥下関連筋の働きは,発声発語に関わる筋群の働きと一部が共通しており,サルコペニアを有する患者の言語聴覚療法において嚥下障害とディサースリアに同時にアプローチできる訓練法が有用な可能性がある.

キーワード サルコペニア,サルコペニアの摂食嚥下障害,フレイル,ディサースリア

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