2026年2月19日,厚生労働省の薬事審議会「再生医療等製品・生物由来技術部会」は,iPS細胞を用いた再生医療等製品2品目(重症心不全を対象とする「リハート」,パーキンソン病を対象とする「アムシェプリ」)について,条件および期限(7年)を付した製造販売承認を可とする方向で議論を取りまとめました.正式な承認は今後の手続を経て行われ,早ければ2026年3月上旬にも承認に至る見込みとされています.承認されれば,iPS細胞を基盤とする治療用製品の「世界初の実用化」となる可能性が示されています.
本稿では,ディサースリアの原因疾患の一つであり,神経難病として進行性の経過をとるパーキンソン病を対象とした「アムシェプリ」の成果に焦点を当てます.
パーキンソン病では,動作緩慢・筋強剛・振戦などの運動症状に起因して,ディサースリアや嚥下障害が高率にみられ,日常生活の質(QOL)に大きく影響します.
「アムシェプリ」(一般名:ラグネプロセル)は,非自己(同種)のiPS細胞から作製したドパミン神経前駆細胞を,脳内の被殻へ移植してドパミン神経機能の回復を狙う細胞移植治療です.適応としては,レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病患者の運動症状の改善が想定されています.移植に伴う免疫反応を抑える目的で,免疫抑制薬(タクロリムス)を用いる治療設計が採られています.
有効性・安全性の根拠となったのは,京都大学医学部附属病院で実施された医師主導の第I/II相試験です.50~69歳のパーキンソン病患者7名に対し,iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を被殻へ両側移植し,24か月間の経過観察が行われました.主要評価項目である安全性について,重篤な有害事象は報告されず,画像評価でも移植組織の異常増殖(過増殖)を認めませんでした.運動症状については,有効性評価対象となった6名中4名でMDS-UPDRS Part IIIのOFFスコア改善がみられ,全6名の平均ではOFFスコアが9.5点改善しました.加えて,18F-DOPA PETでは被殻のドパミン神経活動の増加が示され,移植細胞の生着とドパミン産生を支持する所見が得られています.
これらの結果は,従来の治療(薬物療法や脳深部刺激療法など)が主として“症状緩和”を担ってきたパーキンソン病に対し,失われたドパミン神経機能を「細胞補充」で回復させるという,病態そのものに踏み込む治療概念が臨床段階で前進したことを意味します.神経変性疾患の根本的治療(病態修復)に近づく可能性を示す点で画期的です.
一方で,現時点のデータは症例数が限られるため,承認が実現した場合も「条件・期限付き承認」として,市販後に有効性・安全性を継続検証し,エビデンスを積み上げていくことが前提となります.
なお,本件は「審議会で了承された段階」であり,正式な承認や実診療での提供開始は今後の手続を待つ必要があります.

