Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 15 No. 1 pp 8-13, 2024

特別寄稿

ヒトの嚥下における鰓弓筋群と,その生命形態学的特徴
三枝英人
東京女子医科大学附属八千代医療センター 耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科

要旨 
嚥下運動はすでに胎児期に始まっているとはいえ,栄養摂取目的に呼吸と共に開始されるのは生誕以降である.それは,鼻で呼吸をしながら,ミルクをリズムと共に連続的に嚥下する哺乳で開始される(乳児嚥下).このリズムは鰓弓筋群により生来,賦与されたものである.呼吸と嚥下が一定のリズムから解放される成人の嚥下への移行は,定頸後に始まる脊柱による直立姿勢へ向かう歩みと併行して起こる.呼吸は脊髄神経支配の横隔膜に託されるので,リズムから解放された鰓弓筋群は音声言語機能の発達へと向かう.一方,嚥下は咀嚼に鰓弓筋としてのリズムを託しながら,嚥下時の一瞬の呼吸停止にリズムの節を残し,より栄養価の高いものが摂取できるようになったのであるが,それはあくまで脊柱による安定した直立姿勢が基盤である.
キーワード 嚥下,呼吸,鰓弓筋,脊柱,直立姿勢,リズム

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