Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 9 No. 1 pp 83-90, 2019

特集1 さまざまな神経筋疾患を理解する

総説 脊髄小脳変性症
松島理明、矢部一郎
北海道大学大学院医学研究院神経病態学講座神経内科学教室

要旨 脊髄小脳変性症(SCD)は小脳性運動失調を主症状とする進行性神経変性疾患で,1/3 は遺伝性,2/3 は非遺伝性である.遺伝性のうちの多くは常染色体優性遺伝性であり,非遺伝性の多くは多系統萎縮症(MSA)に該当する.この他に二次性運動失調症もあるため,鑑別が必要である.SCD は病型によって運動失調症状に加えてさまざまな症状がみられる.MSA では起立性低血圧などの自律神経障害が目立つほか,パーキンソン症状も合併し得る.SCD の診断に脳MRI など画像診断は有用だが,診断確定のために遺伝学的検査や除外診断を要する.現時点でSCD の根治療法はなく,対症療法,リハビリテーションでの対応となる.将来的には遺伝子治療などの新たな治療法が期待される.

キーワード 脊髄小脳変性症,多系統萎縮症,小脳性運動失調症状,パーキンソニズム,自律神経障害

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