Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol.3 No.1 pp10-15,2013

言語病理学的疾患を有する患者における舌圧と発話および
非発話機能との関連性に関する検討

西尾正輝1)  阿部尚子2)  渡邉大介3)

要旨:ディサースリア,摂食・嚥下障害,高次脳機能障害のある62例を対象として,舌圧と発話および非発話機能を測定し,主に以下の結果を得た.
1. 言語病理学的診断名別比較検討結果では,ディサースリアに摂食・嚥下障害を合併した群で最も舌圧値が低く先行報告と類似した.
2. 舌圧と会話明瞭度との間に有意な相関を認めず,舌の筋力を会話明瞭度の指標として過剰に重視することは控えるべきことが示唆された.
3. 健常者の最大舌圧のおよそ3分2程度の舌圧が保持されていれば,舌の挙上運動範囲が保持されることが示唆された.
4. 舌圧と/ta/ならびに/ka/の交互反復速度との間に有意な相関を認めた.
5. 舌下神経麻痺なし群と比較し一側性麻痺群は舌圧が低下し,筋力増強訓練の適応性があることが示唆された.また舌圧とバーセル・インデックスとの間に有意な相関を認め,全身的動作能力が低下した患者では舌圧も低下する傾向が示唆された.

キーワード:舌圧,ディサースリア,発話機能,非発話機能,オーラル・ディアドコキネシス

1)新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科(〒950-3198 新潟県新潟市北区島見町1398)
2)社会医療法人新潟勤労者医療協会下越病院リハビリテーション課(〒956-0814 新潟県新潟市秋葉区東金沢1459-1)
3)新潟県立坂町病院リハビリテーション科(〒959-3193 新潟県村上市下鍜冶屋589番)

受稿日:2013年6月20日 受理日:2013年9月5日

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