Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol.2 No.1 pp12-18, 2012

パーキンソン病における音声の基本周波数に関する音響学的検討

阿部尚子1) 西尾正輝2)

要旨:男性のディサースリアのあるパーキンソン病(Parkinson’s disease;PD)21例ならびに比較対照群47例を対象として,話声位(speaking fundamental frequency;SFF),SFFのF0範囲,SFFの変動係数を音響学的に解析し,以下の結果を得た.
1.SFFでは,PD群は比較対照群より若干高値を示したが,統計学的有意差を認めなかった.
2.SFFのF0範囲では,PD群は比較対照群より若干低値を示したが,統計学的有意差を認めなかった.
3.SFFの変動係数では,PD群は比較対照群よりも有意に低値を示した.
以上の結果はPDに起因する運動低下性ディサースリアでは,聴覚的にピッチの異常が著明ではなかったとする報告ならびに声の高さの単調性が高頻度に認められるとする報告を音響学的に裏付けるものといえる.

キーワード:話声位,パーキンソン病,音響解析,ディサースリア

1)下越病院リハビリテーション課(〒956-0814 新潟県新潟市秋葉区東金沢1459番地1)
2)新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科(〒950-3198 新潟県新潟市北区島見町1398)

受稿日:2012年2月26日 受理日:2012年4月17日

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