Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 11 No. 1 pp 70-80, 2021

特集2

ディサースリアの治療の重要論文を読む:治療の時代

翻訳

 
発話速度の調節法がディサースリア例の発話明瞭度と自然度に与える効果
The Effect of Rate Control on the Intelligibility and Naturalness of Dysarthric Speech

Kathryn M. Yorkston, Vicki L. Hammen
University of Washington, Seattle
David R. Beukelman
University of Nebraska, Lincoln
Charlie D. Traynor University of Washington, Seattle
(Journal of Speech and Hearing Disorders, 55:550-560, 1990)

訳:磯野千春
近畿大学病院リハビリテーション部

4種の異なる速度手技(拍子の付加,リズムの付加,拍子の合図,リズムの合図【リズミックキューイング法】)を用いることで,重度の失調性ディサースリア例(4名)と重度の運動低下性ディサースリア例(4名)の平常時の発話速度をそれぞれ 60%と 80%にまで引き下げることができた.発話速度を調節することで,文章や音素の明瞭度,発話の自然度に表れる効果を調査した.文章の明瞭度は両群で改善し,最も大きな改善が得られたのが拍子を付加する条件であった.同様に発話速度の低下という改善も見られたが,音素の明瞭度は改善しなかった.しかし,このことによって文章と音素の明瞭度は異なるということが明確になった.正常話者の自然度は発話速度を低下させて獲得するものではないのと同じように,ディサースリア例の発 話速度を低下させても発話の自然度には影響を及ぼさない. 全ての群において,拍子をつけて速度を調節する手技は自然度の最低評価と関連があった.文章と音素の明瞭度で明らかになった矛盾点について,発展的な説明を示した.
キーワード:コミュニケーション,ディサースリア,発話速度,明瞭度,自然度

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