Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 11 No. 1 pp 62-69, 2021

特集2

ディサースリアの治療の重要論文を読む:治療の時代

翻訳

 
失調性ディサースリア:明瞭度とプロソディーを軸とした治療の流れ
Ataxic Dysarthria:Treatment Sequences Based on Intelligibility and Prosodic Considerations

Kathryn M. Yorkston, David R. Beukelman University of Washington, Seattle
(Journal of Speech and Hearing Disorders, 46:398-404, 1981)
訳:織田千尋
国立精神・神経医療研究センター病院身体リハビリテーション部

回復過程にある4人の失調性ディサースリア発話者への治療プログラムを振り返った.明瞭度とプロソディーという発話行動の二つの総合的な尺度を基準に治療の流れを決めた.明瞭度の改善は,初めは発話速度の調節によってもたらされた.リズミックキューイング法により厳しく速度を強制するものから自分で意識して速度を調整するものまでの,幅広い発話速度調節の方略の階層性について考察した.発話者の自発話への意識が高まるに従い,明瞭度と発話速度の間に妥協点が生まれた.失調性ディサースリア発話者は,強勢を置くために必要な基本周波数,声の大きさ,タイミングの微調整を正確に行うことが困難であるため,正常なプロソディーパターンに至らなかった.4人のうち3人には強勢を示すために発話時間の調整のみを指導した.この方法により,その発話者らは目標語に常に強勢を置くことができ,基本周波数の大きな変化や爆発的発声による異常度を最小限に軽減することができたのである.臨床の視点に立った,より掘り下げた研究の必要性について考察する.

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