Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 10 No. 1 pp 9-15, 2020

特集1 言語聴覚士に必要な運動生理学
総説 運動における神経系の役割

肥後範行

国立研究開発法人産業技術総合研究所人間情報インタラクション研究部門ニューロリハビリテーション研究グループ

要旨 運動を担う筋肉の収縮を制御しているのは神経系である.筋肉に直接結合して情報を伝達しているのが脳幹・脊髄から発し身体の各部位の筋肉に結合する末梢運動神経である.一方,運動を遂行するためのプログラムの形成と制御を担う機構の大部分は脳脊髄内の中枢神経系にある.単純な運動を行っているときにも大脳皮質,大脳基底核,小脳,脳幹(中脳,延髄,橋),脊髄などの脳部位や,皮質脊髄路,赤核脊髄路などの神経路が関わっている.また運動を行う際には視覚や体性感覚などの感覚機能など,運動出力以外の脳機能が不可欠である.運動神経系で可塑的な変化が生じる例も知られており,脳損傷後の機能回復の基盤となっていると考えられる.

キーワード 大脳皮質,脳幹,小脳,脊髄、神経路,可塑性

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