Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 10 No. 1 pp 57-60, 2020

特集1 言語聴覚士に必要な運動生理学
総説 加齢に伴う身体機能の低下

海老原覚,佐々木まどか

東邦大学医療センター大森病院リハビリテーション科

要旨 高齢者はさまざまな臓器の予備能が知らず知らずのうちに低下しており,何らかのストレスがきっかけとしてその臓器の不全が顕在化する場合が多い.加齢による臓器機能の低下・不全によって引き起こす症状や徴候のうち,医療だけでなく介護・看護が必要なものの総称を老年症候群(geriatric syndrome)と呼んでいる.加齢により生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し,生活機能障害,要介護状態,死亡などの転帰に陥りやすい状態で,筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような状態をフレイル(frailty)と呼ぶ.サルコペニアは,加齢に伴って筋肉が減少する病態で,握力や歩行速度の低下など機能的な側面をも含めた概念で,フレイルの重要な要因の一つである.

キーワード 老年症候群,フレイル,サルコペニア

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