Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol.2 No.1 pp47-55,2012


─特集─

Shapingを考慮した顔面に対するCIセラピーの試み
─病的共同運動をいかに防ぐか─

高倉祐樹1) 中山剛志2)

要旨:原因疾患の異なる末梢性顔面神経麻痺2例に対するCIセラピーの臨床経過を報告した.2例の臨床的知見から,末梢性顔面神経麻痺に対してCIセラピーを適応するに当たっては,1)原因疾患,損傷部位,重症度から想定される病的共同運動の出現リスクと,2)麻痺側の段階的な使用(=shaping)の考慮が重要であることが示唆された.さらに,完全脱神経が疑われる最重度例であっても,shapingを考慮したCIセラピーを導入することにより,病的共同運動の増悪を最小限に抑えることが可能であった.末梢性顔面神経麻痺に対するCIセラピーは,「運動機能を強化しながら病的共同運動を予防する」という「二律背反」を克服するための,一つの方略となる可能性が示唆された.

キーワード:末梢性顔面神経麻痺,CIセラピー,病的共同運動,shaping

1)道東脳神経外科病院リハビリテーション部(〒090-0069 北海道北見市美山町東2丁目68番地9号)
2)日本福祉教育専門学校言語聴覚療法学科(〒169-0075 東京都新宿区高田馬場2-16-3)

受稿日:2012年10月15日 受理日:2012年10月15日