Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol.2 No.1 pp19-24,2012


─症例報告─

筋萎縮性側索硬化症(ALS)にともなうディサースリア2例の
音声の経時的変化

岡本卓也1) 西尾正輝2)

要旨:ALSにともなうディサースリア2例を対象とし,フォルマントと話声位の経時的変化を解析した.症例1は37歳,男性.症例2は66歳,女性.実施課題として,1)発話明瞭度,2)フォルマント,3)話声位を測定した.発話明瞭度は単音節および単語レベルで測定した.フォルマントの測定では,低母音/a/, 中母音/e/, 高母音/i/の3母音を持続発声させ,音響解析ソフトウェアを用いてF1とF2を分析した.話声位の測定は長文「北風と太陽」の音読を音響解析ソフトウェアを用いて分析した.その結果,両例で罹病期間との間にF1では/a/で有意な負の相関を認め,F2では/e/,/i/で有意な負の相関を認めた.話声位では症例1では病変の進行に伴い上昇し,症例2では病変の進行に伴い低下する傾向を認めた.

キーワード:ディサースリア,筋萎縮性側索硬化症,フォルマント,話声位

1)新上三川病院リハビリテーション科(〒329-0611 栃木県河内郡上三川町上三川2360番地)
2)新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科(〒950-3198 新潟県新潟市北区島見町1398番地)

受稿日:2012年2月7日 受理日:2012年3月12日